行田ロータリークラブ

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2012-2013年度 国際ロータリーテーマ


2012-13年度国際ロータリー会長

田中作次

奉仕を通じて平和を

長年、ロータリーは、私にとって人生の中心となってまいりましたが、1975年にロータリーへ入会した当初、それから私の人生がまったく違った方向に向かっていくとは、思ってもみませんでした。

ロータリーに入るまで、私の人生観はとても狭いものでした。貧しい家の8人兄弟の4番目として生まれた私を取り巻く人たちも、ほとんどが貧しい境遇にいました。週に一度、母と私は、市場まで20キロの道を、歩いて野菜を売りに行ったものです。日本人以外の方々とは、一度もお会いしたことがなく、あの村が私の全世界でした。ですから、私はいつも、旅することを夢に見ておりました。遠くの町や国を夢見ながら、どんな所なのだろうと想像したものです。

それ以来、幸いにも、頻繁に旅をする機会があり、自分で思いもよらないほど、世界のあちこちを見ることができました。しかし、ロータリーでの経験ほど私の視野を広げてくれたものはありません。

ロータリアンになるまで、私の目に入っていたものと言えば、仕事、家族、顧客、競争相手など、身近なものばかりでした。旅に出ても、お決まりのものしか見ていませんでした。その背景にあるもの、自分と関わりがないと思うものには、気にも留めていませんでした。

しかし、私はある日、推薦を受けて八潮ロータリー・クラブに入会しました。それから2年後、ある方が例会に来て、職業奉仕についてお話をしてくださったのです。私は、その日から少しずつ変わっていきました。収入や、売り上げを増やすことや、自分の会社をほかの会社よりも良くすることだけでなく、人として、職業人として、もっとよい、もっと高い目的を持って人生を送りたいと思うようになったのです。そしてそのために、ほかの人たちの役に立つことが、私にとって人生で最も大切だと思うようになりました。さらに私は、どんな些細なことでも、人を助けることがいずれは平和につながることに気づきました。

平和」というのはよく耳にする言葉です。ニュースでも、日常会話でも良く聞きますし、ロータリーでも頻繁に口にする言葉ですが、私たちは、「平和」とは何なのか、どういうことなのかを、あまり考えることはありません。一番簡単なのは、「平和」ではない状態がどのようなものかを語ることでしょう。つまり、戦争や暴力や恐れることのない状態のことです。飢餓や、弾圧や、貧困を恐れることのない状態です。

また逆に、「平和」を、それが何であるか、どういう可能性を秘めているのかで定義することもできます。そういう意味では「平和」は、発言と選択の自由であり、自己決定の権利であると定義できます。安全で安心できる未来を意味し、安定した社会での人生と家庭を意味するとも言えます。そしてもっと抽象的に言うと、「平和」とは幸福感や心の平穏、静けさであるとも言えます。ですから、「平和」が何を意味しているのかは、人によって違うのです。どの定義が正しいとか、間違っているとかということではなく、自分にとって「平和」が意味すること、それがまさに平和なのです。どのような意味でこの言葉を使うにしても、ロータリーでそれを実現することができます。

ロータリーは、保健、衛生、食糧、教育などの人々の基本的なニーズに、最も必要とされている地域で応えることができます。そして、友情、つながり、思いやりといった、私たちの心のニーズにも応えることができます。さらに、国や民俗間の友情と寛容を推進することで、ロータリーは、最も伝統的な意味での「平和」を、つまり、互いを理解し合う後押しをしてくれるのです。

ロータリーの奉仕を通じて、私たちは、大きな問題のように見えることでも、力を合わせれば、すぐに解決できることを学びます。人を思いやることを学びます。自分と違った境遇の人々と知り合うことで、人はみな同じであると理解できます。

ロータリーの奉仕を通じて、私たちは、何かを達成しようとするなら、対立より協力を選ぶのが得策であることを知ります。ほかの人の長所と短所、両方を尊重することを理解します。そして、どんな人からも必ず得るものがあり、教えられるものがあることを学びます。

私は、「超我の奉仕」は単なる標語ではないと考えております。それは、誰の人生をも、さらに豊かで、有意義なものにする、生き方を示していると思います。

ロータリアンは、自分よりも、ほかの人のニーズを重視します。自分のためだけではなく、社会全体のためを考えます。「超我の奉仕」という言葉は、人生で本当に大切なこと、エネルギーを注ぐべきことは何なのかを、私たちに教えてくれる言葉です。そうすることで、より平和な世界の基盤を築くことができると考えます。

そこで私は、2012-13年度のロータリーのテーマを、「奉仕を通じて平和を」といたしました。それは、「平和」をどのように定義するにしても、私たちは奉仕を通じて、平和をもっと現実に近づけることができるからです。

また、「超我の奉仕」は、人はみな自分だけでは生きていけないということを教えてくれます。人との関わりのない人生は、空しく、つまらないものですが、家族、地域社会、そして人類全体における自分の役割を常に意識して、つまり、人のために生きることで、この世界における自分の役割がはっきりと見えてくるのです。

私の世代は、戦後に日本で育った最初の世代でした。ですから、私たちが、それほど平和を重視するのは、当たり前かもしれません。日本で軍国主義の台頭の結果を経験した私たちの世代は、自分たちの考え方を変え、平和を選ぶ大きな決断をし、その結果、目覚しい経済発展を目にしました。

この決断があってこそ、日本は成長と繁栄を遂げることができたと思います。これによって、次世代の子供たちが安全な暮らしを送り、教育を受け、暮らしを向上させることができたのです。この決断は、日本人の世界に対する見方と、自国に対する見方を根本的に変えました。日本人は心を開き、寛容を学び、もっと深く世界を理解するようになりました。

さらに、平和を選択したことによって、私たちはより前向きな目標に力を注げるようになりました。個人のニーズより、社会のニーズを重視するのは、日本の文化と切り離せない、伝統的な価値観です。2011年3月の大地震と災害後の苦しみを乗り越え、復興に努力できたのも、この価値感があったからです。

これは、日本以外の国々にとっても、良い教訓であると感じております。他者のニーズが、自分自身のニーズよりも大切だと思え、社会全体のための共通の目標に向かって力を合わせることができるようになれば、世界に対する見方、関わり方、価値観など、すべてが変るようになります。そして何よりも、平和というものに対する考え方が変ります。

私は、「奉仕を通じて平和を」という概念に、難しい哲学はないと思っています。私は、哲学者ではありません。一介のビジネスマンです。ただ、ビジネスマンとしての長年の経験から、私は、事業を成功させるには、顧客の満足を追求する以外にないという結論に達しました。顧客に喜んでもらえれば、事業も成長します。そうすれば私自身も幸せになれる。しかし、それは事業が成功しているからだけではなく、人を幸せにしてあげることができたという認識があるからです。

事業においても、人生においても、目標を達成したいなら、まず方向性を定めなければなりません。ロータリーは、RI戦略計画の目標と優先項目を、組織全体のロードマップとする決断を下しました。

2012-13年度には、地区内のクラブにおいて「クラブのサポートと強化」、「人道的奉仕の重点化と増加」、公共イメージと認知度の向上」という、RI戦略計画の3つの優先項目に、一層の力を注いでいただくよう、皆さまにお願いしたいと思います。

また、広島、ベルリン、ホノルルで開かれる3回のロータリー世界平和フォーラムの推進にも、ご協力をお願いいたします。本協議会中に、この重要な行事について皆さまに情報が提供されます。皆さまの多くが推進に関与されるとともに、優先してご出席いただけることを願っております。

ロータリーのビジネスは、利益の追求ではなく、平和の追求です。ですから私たちにとって、報酬はお金を手に入れることではなく、自分の努力によってより良い、より平和な世界が実現するのを見届けることにあります。

皆さま、本年度、「奉仕を通じて平和を」を、ロータリー活動の最重点としていただくようお願いいたします。また、どのように定義するにせよ、「平和」がロータリーにとって究極の、そして実現可能な目標であることをご理解ください。平和は、協定や、政府や、大胆な闘争だけで達成するものではなく、日常の簡単な方法の積み重ねによって成し遂げるものであります。


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